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ASKA(宮﨑重明)氏がhatenablogに公開したブログ全文

5 韓国ライブ

2000年。韓国でライブをやることになった。突然、韓国政府から招待されたのだ。日韓の音楽の架け橋になるアーティストをずっと探していたのだと言う。韓国側の関係者は、数年に渡り日本のいろんなミュージシャンのライブに足を運んでいた。私たちに白羽の矢が立ったのは、福岡のCOUNTDOWN LIVEだった。私たちは韓国政府に招かれ、大統領官邸「青瓦台」で大統領令夫人と会うことになる。

「コンサート頑張ってくださいね。応援していますよ。」

優しい眼差しで声をかけてくださった。

当時、日本と韓国は2002年に合同で開催されるサーカーのワールドカップを成功させるために国同士が動き出した。それまで歴史問題で距離のあった両国ではあったが、スポーツや音楽などの民間交流にそれは託された。政治では埋まらない溝を文化で埋めようという試みだったのだ。
私には以前から不思議に思っていることがあった。私ひとりではそうはならない。CHAGEひとりでもそうはならない。しかし、二人が並ぶと相手が扉を開いてくれるのだ。中国でもそうだった。放送局のトップと面談したときだった。トップは三人だけで話がしたいと言う。スタッフも通訳も席を外してくれと言う。私たちはひとつの部屋へ誘導された。何故三人だけなのだろうか。ソファに座る。そして、とても穏やかな口調でこう言われたのだ。

「私は日本人が大嫌いです。」

流暢な日本語で冒頭から否定されたのだ。私たちは息を飲んだ。どうにも反応が出来ない。私はきゅっと口を結んで笑顔を返すのがやっとだった。歴史は根深い。話は続けられた。どんなことを言われても真摯に対応しようと思った。今、試されている。アジアに試されている。

「これは生理的なことだからしょうがない。しかし、あなたたちだけは不思議とそうじゃない。私にも分からない。中国でのコンサートを全面的に応援します。」

椅子から立って握手を求められたのだ。日に照らされた荒れ地に恵みの雨が降り注いだような瞬間だった。最初にやるのは本当に大変だ。相手国のスタッフとコミュニケーションを取りながら人間関係を一から積み上げて行かなくてはならない。マスコミも味方につけなければならない。勇気と覚悟、情熱と敬意で臨んだ。しかし、何よりも懸念しなくてはならないことがひとつあった。失敗するかもしれないということだ。ライブは出来ても成功は約束されていない。常にリスクに対するダメージコントロールを考えながらの異国ライブだった。失敗はその後の日本での活動に大きく響いてしまう。いつも、いつもスタッフの苦労は計り知れなかった。間もなく韓国が門を開きそうだという情報は入ってきていたが、乗り越えるバリケードは高いだろう。これまでの苦労を考えると、韓国ライブに関しては手を挙げる気持ちにはなっていなかった。寧ろ、誰かが敷いてくれたレールの上を後から走って行くことを望んでいた。かける労力も金銭も、圧倒的に楽だからである。ところが、前触れも無く韓国政府に招待され、我々が赴くとその場で日韓の親善大使に任命された。二度目に訪韓した際には、日本の音楽協会が足を運んでも会えなかった、南北会談の影の立役者パク・チオンさんが我々を迎えてくれたのだ。取材の最中などにも顔を出してくれた。自分の足は自分できちんと使わねばならない。韓国女性基金団体が、私たちCHAGE&ASKAを見つけてくれたことに心から応えようと思った。

女性基金団体と言えばこういうことがあった。取材の時だった。ジャーナリストが慰安婦問題を突きつけてきたのだ。一瞬言葉を失った。その時だった。女性基金のスタッフが咄嗟に飛び込んで庇ってくれた。「取材では慰安婦問題には触れない」という約束が交わされていたのだ。しかし、突発的に起こった出来事を打ち消すことは、もはやできなかった。発言を求められる場がそこに生まれてしまったのだ。我々はクレームをつけるスタッフを制して、世代の歴史観を自分たちの言葉で説明した。話が終わった時だった。スタッフのひとりが涙をポロポロ流しながら手を握ってきたのだ。春先のような手の温もりだった。

帰国すると、我々のプロデューサーである渡部はその足で日本音楽事業協会。通称「音事協」へ報告に行った。それまで「音事協」では韓国音楽協会と一緒になり、韓国ライブを実現させる第一号日本人アーティストを数年間かけ、水面下で探し合っていたのだ。取り分け韓国は慎重になっていた。

後に韓国スタッフが話してくれたのだが、私たちCHAGE&ASKA、そして渡部の日本でのすべての行動は「KCIA」(韓国中央情報部)に監視されていたのだった。出生、生い立ち。全て調べられていた。スキャンダラスなことが、ひとつもあってはならなかったのだ。約1ヶ月間の監視だったという。私には心当たりがあった。実は韓国政府に招待される少し前に、私の自宅側に無線機を積んだ車が1週間ほど停まっていたのだ。気になった私は知り合いの警察官に頼んで、毎日3時間おきに家の周りをパトロールしてもらった。韓国はそれほど慎重になって、日韓幕開けのアーティストを探していたのだ。その後、私たちは無事記者会見を終え、韓国でライブをやることを正式に発表した。ただ、大きな問題があった。韓国では日本楽曲のCD発売が解禁になっていなかったのだ。オンエアーもされていない。台湾ではライブ直前に解禁になった。韓国ではそうはならなかった。楽曲プロモーションが出来ない。アンダーグラウンドでは広がっていたのだが、所詮アンダーグラウンドはアンダーグラウンド。メジャー展開でのコンサートプロモーションが出来ない。急遽、我々は国外でリリースしていた「Something There」とアルバム「One Voice」をプロモーションの軸に切り替え、洋楽アーティストとして乗り込んで行った。日本国内で英語曲をリリースしたとき、多くの批判を浴びたが、あれがなければ韓国ライブのプロモーションは何も出来ないままで終わっていた。ライブは8月26,27日の2日間、1万人収容のオリンピック公園チャムシル体操競技場で行われることになった。このライブには口にできない秘話がある。これは我々が活動を引退した時に話すこととしよう。

そういうこと

そういうことで
そうしておいて

そうでなければ
そうなんだ

そうしたら
そうは言えまい

そういうわけで
そうなった

本当のことを嘘のように言い
嘘のことを本当のように言う

口に出したら
ただの負け

つまり
そういうことだ

0 700番
1 序章
2 ロンドン
3 kicks
4 ピンチとチャンス 
5 韓国ライブ
6 リアルキャスト解散
7 GHB
8 勘違い
9 飯島愛
10 盗聴盗撮
11 覚せい剤
12 音楽関係者
13 恐喝
14 週刊文春
15 エクスタシー
16 逮捕
17 裁判
18 メール
19 後記
20 追記

ページ:
1 2 3 4 5

6

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覚せい剤取締法違反罪で逮捕され2014年9月に、懲役3年、執行猶予4年(求刑懲役3年)の判決を受けた、歌手のASKA(宮﨑重明)

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